橋下市長は法律家

橋下市長「法律家として危ないなと感じていた」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

この報道に対して,「法律家www」との声も多い。しかし「橋下氏の考え方は,彼が法律家であることに基づいている」と考えると理解できる。

1.ウソはつかない

 はぐらかすけど。案外,「独裁者として権力を揮いたい」という欲望を隠さず表明している。はぐらかすのは,他人から問い質されたとき。「偽証はしないが黙秘はする」という法律家としてのモラルの表れではないか。

2.ゼロサム主義者

 それも強烈な。自分が勝つには,誰かが負ける必要があると信じている。正に,法廷における法律家の思考。

 自分が得するには,誰かが損しなくてはいけない。自分が豊かになるには,誰かが貧しくならなくてはいけない。自分が利口になるには,誰かが馬鹿にならなくてはいけない。彼の言う「競争とは,そういうことである。

 教育では,全員の能力を底上げするという発想はない。経済発展でも,Win-Win の関係は幻想と思っている。日本が経済発展するためには,途上国は貧しいままでいてくれないといけない。大阪都構想も,「東京が発展しているから大阪が発展しない」との発想に基づいている。

3.権力志向の起源

 「法律家としての考え方」に,「橋下氏の生い立ち」が結びついたことで権力への渇望が生まれた。他人から差別されたり踏みつけにされたりすることが嫌ならば,他人を差別し踏みつけにすることだ。

 現実には権力の階梯を昇るほどに,社会からの批判が強まる。橋下氏は,『財政再建プログラム試案』を市町村長に説明する席で涙を浮かべた。自分の権力が強くなったはずなのに叩かれてしまう情況は,彼にとって出口のない地獄なのではないか。

橋下氏の世界

橋下氏に,世界はこう見えている。

  • 社会とは政治家が闘う場。法律家にとっての法廷と同じ。
  • 味方でなければ敵。勝たなければ負け。
  • 有権者は陪審員。啓蒙するな。言い包めろ。
  • マスコミその他は傍聴人。ヤジを飛ばすな,黙ってろ。
  • その場で言い負かせば勝ち。後の責任は負うのはオレじゃない。

これからの橋下氏

 橋下氏自身は,自分の考え方が法律家としての考え方に捕らわれていると気付いていないだろう。同じ考え方が政治の世界でも通用すると信じて疑っていない。自分は成功していると思っている商売人と同じように。どこかで政治家としての考え方学んで欲しいものだが,本人はその必要を感じることはない。政治家 橋下氏にとって,社会とは法廷であり闘う場所。学ぶ場所ではないから。

 だからこそ,自分の考え方の制約に気付けば豹変する可能性はある。誰かが橋下氏に,「『政治家の手法』を法廷に持ち込んでもうまくいかないように,『法律家の手方を政治に持ち込んでもうまくいかない」と,納得させられると良いのだが。